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法律情報

三菱商事、執行役員から社長を選べるように定款を変更へ

執行役員というのは、取締役ではない従業員の最上位者である場合と役員が兼任して担当業務を明確にしている場合など様々な使い分けがされています。

三菱商事では、執行役員は業務執行を担当する役割であり、役員であるか従業員であるかとは直接関係しない制度設計を採用している模様ですが、このたび社長は執行役員から選ぶことにして、会社法と直接関係しない執行役員と社長が連続性を有するように定款変更を行うことが明らかになりました。

三菱商事 - プレスルーム - 2014年 - 定款一部変更に関するお知らせ | 三菱商事

社長を業務執行の最高位者に位置づけるということで三菱商事における執行役員の最上位という意味合いになる模様です。これはこれで一貫性を有する考え方といえましょう。

ご存じのとおり社長という役職も会社法上の仕組みではなく、会社法上求められているのは取締役や代表者ですので、社長をその代表取締役にあてているだけというのが実情です。

そこで社長と代表取締役を制度上は切り離すということになるものと思われます。

すると、会社の代表権限がない社長になった場合、対外的な法律行為が必要な場合に業務執行に支障が出てしまう事態が起きそうです。

報道によると、取締役ではない社長になった場合にはその後の株主総会で代表取締役に選任する扱いとされる模様ですが、定款上は必ずしもそこまでの内容を含んでおらず、事実上の運用ということになるのでしょう。

日本郵便、東京メトロの子会社などで、非正規雇用の労働者が正社員との賃金の差について労働契約法20条に基づいて請求する動きが発生

昨年改正された労働契約法の内容のうち、有期契約であることを理由とする不合理な労働条件の違いを禁じる規定が盛り込まれていますが、この規定に基づいて正社員との賃金の差について請求を行う訴訟が提起されたことが明らかになりました。

東京メトロ子会社:非正規労働者ら賃金格差などで賠償提訴 - 毎日新聞 2014年05月01日 10時29分(最終更新 05月01日 13時04分)

東京メトロの駅売店で働く非正規労働者ら4人が1日、売店を運営する東京メトロの子会社「メトロコマース」(東京都台東区)を相手取り、正社員との3年分の賃金格差を含む計約4250万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。有期契約を理由に正社員との間に不合理な労働条件の格差を設けることを禁じた改正労働契約法(2013年4月施行)を根拠とした初めての裁判になる。

提訴したのは、全国一般東京東部労組メトロコマース支部の後呂(うしろ)良子委員長(60)ら2人と、定年になった組合員2人。訴状などによると、4人は3カ月から1年の契約を更新しながら物品販売などの仕事をしてきた。正社員と非正規労働者の仕事の内容は同じなのに、賃金には月給制と時給制という違いがあり、ボーナスも正社員の年間約150万円に対して非正規は2種類の雇用形態に応じて59万円または26万円に抑えられた。さらに、正社員にはある退職金も支給されないという。

(略)

契約社員:正社員と仕事同じ 手当支払い求め日本郵便提訴 - 毎日新聞

日本郵便(東京都千代田区)の契約社員3人が8日、正社員に支払われる年末年始手当などが支払われないのは改正労働契約法に違反しているとして、日本郵便に計738万円の支払いなどを求め東京地裁に提訴した。今後、関西でも9人が同様の訴訟を起こす方針。日本郵便には約19万人の非正規労働者がおり、勝訴すれば大きな影響が予想される。

3人は労働組合「郵政産業労働者ユニオン」(日巻直映<ひまき・なおや>委員長)に加入する浅川喜義(きよし)さん(42)ら時給制の職員。

訴状などによると、浅川さんは2007年6月、6カ月の契約社員として働き始め、15回の契約更新を重ね、郵便物の仕分けや配達などを担当してきた。仕事の内容が同じ正社員には支払われる年末年始勤務手当(12月29〜31日は1日4000円、1月1〜3日は1日5000円)が支給されず、住居手当なども支給対象外。他の2人の原告も、同様に手当がつかないという。

(略)

労働弁護士が、労働契約法20条訴訟と呼称している模様ですが、改正労働契約法を根拠にしての動きが施行後1年経過して出てきた模様です。

第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

この訴訟においては、職務内容に照らしてどうなのかというこの規定の要件に基づく争点がまずあり、その後にそれが不合理といえるのか、そしてそもそもこの規定は私法上の請求権を基礎づけるのかという争点までありうる大変重い論点が存在することになります。

社会的な動きの端緒を担うということで大変慎重な訴訟追行が予測され、意義深い訴訟になるものと思われます。

上記論点についての私見は追って別の記事で述べたいと思います。

6月の株主総会後、東証上場企業の7割が社外取締役を設置するとみられることが明らかに

社外取締役の設置義務付けそのものは法律上はまだなされていませんが、東証の規則で独立役員の設置を求めたことなどから、これまで社外取締役を置いてこなかった企業でも導入する動きが相次いでいます。

その結果、今年の6月の株主総会でも役員選任議案で社外取締役を含んだ内容の提案が多くされることで、社外取締役を導入する企業が総会後には東証上場企業の7割に上ると予測されていることが、証券代行の三菱UFJ信託によって明らかになりました。

時事ドットコム:社外取締役導入、7割に上昇=増配に期待-6月株主総会

6月の株主総会は、上場企業の社外取締役導入や増配などの株主還元策に注目が集まりそうだ。株主名簿の管理など「証券代行業務」を手掛ける三菱UFJ信託銀行は、社外取締役導入企業の割合が、東証上場企業の55%程度から6月の総会後には「7割程度まで上昇する」と予想する。
社外取締役導入企業の急増が見込まれる背景には、今国会で成立見通しの会社法改正案では、社外取締役を置かない上場企業は株主総会でその理由を説明することが必要になることがある。3月期決算企業にとって、6月の総会で導入を見送れば、企業統治(コーポレートガバナンス)に対する姿勢を株主から厳しく問われかねないからだ。

(略)

上記報道の通り、導入しないことの説明を求めるというのに抵抗感があり、それなら設置すればよいのだろうということで動きが加速されていると分析されています。指摘を受けるような事態は避けたい、悪目立ちはしたくないという企業ならまあ当然有している心理が反映しているものといえそうで、そうならば設置義務付けまで法制化しなくても実質的に実現できるという意味で巧妙な立法技術なのかもしれません。

東京海上の現役社員が、保険料の不払いについて自分に責任転嫁がされて降格されたとして会社を相手取り、損賠賠償請求訴訟を提起していたことが明らかになる

保険金の不払い問題が社会問題化したことがありましたが、その件の処理を巡って労働紛争が発生していたことが明らかになりました。

不払い引責降格は不当…東京海上日動社員が提訴 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)2014年05月02日 15時16分

東京海上日動火災保険が自動車保険金の一部を支払っていなかった問題で、現役社員の男性が、不払いへの対応に不備があったとする虚偽の理由で降格処分を受けたのは不当として、当時の上司と同社に3000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴していたことがわかった。


男性側は「不払いを会社側から指示された」と主張している。

訴状によると、男性は損保各社の不払いが発覚した2005年当時、契約者の中から追加払いの対象者を探す作業を担当。06年、上司から「調査対象の書類を捨てたのか」と聞かれ、否定したのに、「男性が書類を廃棄し、契約者を一律に『支払い対象外』と判断した」とする社内報告書を作成された、としている。

男性は訴状で、当時、会社から「(追加払いの)対象を絞り込み、極力ゼロにして報告せよ」と指示された、と主張。「支払うべき保険金を隠蔽する作業をやらされたうえ、責任を押しつけられた」としている。

上記読売新聞の報道では言及れされていませんが、日経の報道ではすでにこの社員は労働審判を起こしたことがあり、その手続きの過程で、上記の社内報告書が作成されていることを知ったということのようです。

不払いを会社から指示されたという衝撃的な主張をしていますが、報道によると、不払いそのものを指示されているようには見えず、社内報告書は人事的な手続きにどのように関係しているのかも不明です。そもそもの人事が、人事権行使として行われたのか、懲戒として行われたのかも不明なので、どのように整理をするのかも難しいとのことがありますが、原告の主張の通りに組み立てることができるのかについてはまだまだ超えないといけないハードルがいくらかあるように思われます。

グルメ杵屋、非正規雇用の社員のうち5%を限定正社員に登用

非正規雇用の待遇を改善する動きが広がってきていますが、特に人手不足感の強い外食産業では顕著です。

グルメ杵屋は、非正規雇用の社員のうち5%を限定正社員に登用して、普通の正社員を他に振り向けるという人事政策を講じることが明らかになりました。

パートら440人正社員化 グルメ杵屋、安定雇用で人で確保 - MSN産経ニュース2014.5.3 17:36

うどんやそばのチェーン店を展開するグルメ杵屋(大阪市)は3日、人手不足の解消や品質向上のため、パートやアルバイト店員ら約440人を7月ごろから順次、短時間勤務を想定した正社員とする方針を明らかにした。(略)

グルメ杵屋によると、全国にうどん店「杵屋」など直営440店(3月末時点)を展開しており、1店につき1人程度、正社員を増やす計画。国内店舗で働くパート、アルバイトは約8700人で、うち5%程度を正社員化する見通し。

1日4~6時間程度の勤務を想定しており、子育て世代や家族を介護している人などが主な対象となりそう。短時間勤務のため、既存の正社員(約710人)とは給与体系が異なるという。

(略)

報道の見出しだと、正社員化という短縮形で書かれていますが、その内容は上記のように短時間正社員、地域限定正社員であるというのが現実のようです。

限定正社員は、もとから特段規制されているものではありませんでしたが、安倍内閣の規制緩和の中で言及されて以来、活用例が見られるようになってきました。何かが立法されたわけではないのですが、これだけ実際の活用の例が出てくることを見ると、意味のあったことがわかります。

もっとも、助成金整備の政策では、限定正社員の活用をすると、助成金が出るようなものがいくつかもうけられているので、政府としては示唆を与えただけではないのですが、そういうこともあり、ある程度意味のある結実を見せているのかもしれません。助成金は基本的に広く薄くなのでグルメ杵屋のような規模の大きな企業がインセンティブとするようなものではないと思われますので、大企業が動くというのは、やはり意義を認めたからということなのでしょう

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