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民事手続法事情

事業再生ADRで債権者会議を全員の同意を要している現行から、4分の3の多数決へと変更する案が検討されていることが明らかに

再生型の法的整理である会社更生、民事再生ではなく、法的整理ではない私的整理のうち裏付けがあるという点で法的な仕組みに近い事業再生ADRについて、使い勝手を良くする修正が検討されており、政府の成長戦略に盛り込まれる方向であることが明らかになりました。

事業再生ADRは主に銀行団だけが債権放棄をすることで仕入れ先に迷惑をかけないことなどが期待されるものですが、債権者全員の同意がいるため、実際にはうまくいかず法的整理にいたったり、そもそもそれを懸念して最初から選択されないという傾向があるとされていました。

そこで、債権者会議を多数決に修正することが検討されています。諸外国は多数決であることが多いとされていますが、そのうちイギリスと同様の4分の3の多数決とする方向とされています。

このニュースは日経でしか報道されていないことからアドバルーン的な要素があるものと思われますが、大きな制度変更ではあるので、今後が注目されます。

最高裁,権利能力なき社団に,その社団の構成員に総有的に帰属する土地について,その社団の代表者名義への移転登記を請求する訴訟の当事者適格があると判示

何を言っているのか判然としないタイトルで申し訳ありません。しかし,民事訴訟法の基礎的な分野について興味深い判例がでましたので,取り上げます。

民事訴訟法の教科書的な問題として,当事者能力というテーマがあります。

権利能力なき社団については,民事訴訟法で当事者能力が認められているのに,権利能力なき社団はその名前の通り権利能力の主体になることができないので,訴訟をすることができるといわれてもいったい何の実益があるのか,どのような訴訟ならできるのかが問題となるために論点として議論の蓄積がある分野です。

紛争の局面に即して述べると,権利能力がないわけですから,権利能力なき社団で財産を持つ場合には,代表者の個人名義になるわけですが,その財産をめぐり訴訟の必要性があった場合,誰が訴訟を提起するべきなのかが問題となるわけです。

司法試験の短答知識ですが,最高裁は,代表者が自己名義への引渡しを請求訴訟をするべきといったことがありまして(最判昭和47年6月2日民集26巻5号957頁),このことの反射的な効果として,社団自身が原告になることには否定的な理解がされてきました。

要するに代表者がやらないといけないというわけですが,すると民事訴訟法上,権利能力なき社団に当事者能力を与えた意味がおよそなくなってしまいます。

この考え方の背景には,権利能力なき社団の財産にかかわる請求権自身は,社団に権利能力がないので帰属せず,訴訟担当を認めるにしても,例えば登記請求権では代表者個人という主体がいるのに,訴訟担当を認めることができるのかという訴訟要件の問題があったためです。

もっとも,判例は,入会権について代表者の訴訟追行について授権を要するとしていることから,社団の性格から当事者適格を認めることで訴訟担当構成を許容する余地があるともいえました。

そのような中,権利能力なき社団に,代表者への移転登記請求訴訟を行うことについての,当事者適格を正面から認めた判例がでました。

最高裁判所第一小法廷平成26年02月27日判決 平成23(受)2196 所有権移転登記手続等請求事件

そもそもの原因は,代表者の交替に伴う登記の移転が必要になったためであるようなのですが,本件ではあまり法律論に関わってこないので省略します。

最高裁の理由づけは,正面からは,実質的には社団が所有しているといえるので,訴訟追行を認めた方が簡明であり,当事者の意思にも合致するということです。

このほかに補強的な材料として,上記の昭和47年判決も,社団が代表者名義への請求をすることについてはブランクであることにも触れています。

したがって,最高裁は実質的には社団が所有しているということから,訴訟の有効性は認めたわけですが,権利能力の主体ではないというところは維持しているため,当事者適格があるという構成にしているわけです。

しかし,結果を実現するのに,それで十分かということを考えると,逆に当事者適格を否定する事情となりかねないために,執行の場面についても若干触れてフォローをしています。

権利能力なき社団の訴訟の判決効は,構成員全員に及ぶため,代表者はこの判決から直ちに自己への移転登記請求ができるとして,問題はないことに触れています。

従来からの延長上の範囲内で合理的に解決を図るという意味で,当事者適格構成を最高裁が採用したということであり,理論的には批判がありうるところでしょうが,実態としては妥当なところなのだと思われます。

最高裁,明示的一部請求は残部についても裁判上の催告の効果があると判示

非常に教科書的な論点についての判例が6月に出ておりまして,遅れましたが取り上げます。

本当は多岐にわたる判示があり,もっと長いタイトルにするべきなのですが,短くまとめました。

 

民事訴訟法の教科書で出てきますが,一部請求と時効中断という論点があります。

債権のうちの一部請求をした場合に時効中断がどの範囲で生じるのかということでして,判例は明示的一部請求の場合は訴訟物を当該一部としていますので,訴訟物の範囲で時効中断するということで当該一部だけということで決着しています。

そういうことで,判例によって結論が出ている論点なのですが,消滅時効ぎりぎりに明示的一部請求をして,その認容判決の確定後に残部請求をしたものの,その第二訴訟提起の時点では消滅時効が完成するだけの期間が経過していたという事案で,残部についても第一訴訟で時効中断がされていたのかという点が争われて最高裁に至りました。

最高裁判所第一小法廷平成25年06月06日判決 平成24(受)349 未収金請求事件

事実関係を簡単にまとめますと,平成17年6月24日に時効が完成する債権について,Xが平成17年4月16日に内容証明で催告をして,同年10月14日に明示的一部請求の訴訟を提起しました。

この訴訟で,債務者であるYは,相殺の抗弁を出したところ,一部請求と相殺の外側説にたつと一部請求の金額を上回ったことから,平成21年4月24日に請求が全部認容されました。この結論は,平成21年9月18日にに確定しました。

この確定に先立ち,Xは相殺の抗弁を前提として計算される残部について第二訴訟を提起したところ,最初の催告から6か月以内に訴訟提起がされていないので時効消滅したとYが主張したというものです。

原審では消滅時効の成立が認められたことから,Xは,①明示的一部請求でも残部について裁判上の請求の準じる効力があり時効中断の効力が生じる,②①が認められなくても裁判上の催告の効力があり,第一訴訟の確定前に第二訴訟を提起した以上,時効中断の効力が生じていると主張したものです。

判例裁判例が,裁判上の請求に準じる効力を認めたものがいくつかあることからそれに該当するのだという主張と,該当しなくても裁判上の催告の効力はあると順序をつけて主張しているものであり,理論的に組み立てられれているように見えます。

しかし,明示的一部請求の場合に訴訟物は一部であることは判例上明らかですので①はどうみても無理があります。

そこで最高裁は①は認められないとしたのですが,②については,裁判上の催告の効力は認めたため,本判決がなされるに至りました。

明示的一部請求の訴えが提起された場合,債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部について,裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずるというべきであり,債権者は,当該訴えに係る訴訟の終了後6箇月以内に民法153条所定の措置を講ずることにより,残部について消滅時効を確定的に中断することができると解するのが相当である。

しかし,裁判上の催告がどのような場合に認められてきたかを考えると,この場合が含まれるのはある意味当たり前でして,問題は,含まれるか否かではなく,催告を繰り返すことはできないことから,この期に及んで裁判上の催告の効力であると認められても意味がないのではないかという点です。

案の定,最高裁は以下のように述べて,最初の催告から6か月で消滅時効が完成するとしました。

催告は,6箇月以内に民法153条所定の措置を講じなければ,時効の中断の効力を生じないのであって,催告から6箇月以内に再び催告をしたにすぎない場合にも時効の完成が阻止されることとなれば,催告が繰り返された場合にはいつまでも時効が完成しないことになりかねず,時効期間が定められた趣旨に反し,相当ではない。
  したがって,消滅時効期間が経過した後,その経過前にした催告から6箇月以内に再び催告をしても,第1の催告から6箇月以内に民法153条所定の措置を講じなかった以上は,第1の催告から6箇月を経過することにより,消滅時効が完成するというべきである。この理は,第2の催告が明示的一部請求の訴えの提起による裁判上の催告であっても異なるものではない。

ある意味,当たり前の判示ということができましょう。したがって,これまた当たり前の帰結ですが,時効成立直前である場合には一部請求を選択すると,残部については時効成立となってしまう可能性が高いということになるわけです。理論的にはこのような帰結になるのは当然ということになりましょう。

最高裁,千葉裁判官の補足意見で将来給付の訴えの利益を否定した昭和63年3月31日判決の射程を限定する言及を行う

半年前の判決であり,今更という感じなのですが,取り上げます。

民事訴訟法135条に定められている,将来給付の訴えの利益については,大阪空港事件の最高裁判決が先例となっていることは有名な知識です。

第135条(将来の給付の訴え) 
将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。

最大判昭和56年12月16日民集第35巻10号1369頁

およそ将来に生ずる可能性のある給付請求権のすべてについて前記の要件のもとに将来の給付の訴えを認めたものではなく、主として、いわゆる期限付請求権や条件付請求権のように、既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在し、ただ、これに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証しうる別の一定の事実の発生にかかつているにすぎず、将来具体的な給付義務が成立したときに改めて訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立証することを必要としないと考えられるようなものについて、例外として将来の給付の訴えによる請求を可能ならしめたにすぎないものと解される。

端的にまとめますと,発生が確実で,将来において債務内容の変更がある場合に債務者が請求異議で立証することになっても不当ではないようなものに限られるということになります。

ここからいくと,賃料,利息,扶養料などなら該当しそうということになります。

しかし,賃料が問題となった件で最高裁は将来給付の訴えの利益を否定したことがあります。それが最判昭和63年3月31日です。

この事件は,賃料が問題になっているのですが普通に賃借人に請求しているわけではなく,土地の共有者が単独名義の登記名義を有している他の共有者に対して,共有持ち分を超える分の賃料相当額を不当利得として請求したというかなり複雑なものであり,上記大阪空港事件の規範に照らして,将来給付の訴えの利益を否定したのです。

これは賃料に関係しているのに将来給付が認められなかったという点だけ捉えると教科書的知識とやや異なる点で意外な判示であり,司法試験の短答で出題されてもおかしくない知識ということになります。

さて,去年の暮れですが,同じような持分割合を超える賃料相当額の不当利得返還を将来の分まで請求した事件で最高裁判決が出たのですが,その中で昭和63年判決の射程について詳細に言及するという一風変わった判示がなされました。

最高裁判所第二小法廷平成24年12月21日判決 平成23(受)1626 所有権移転登記手続,持分移転登記抹消登記手続等,持分権確認等請求事件

この事件の法廷意見自体は,昭和63年判決があるので将来給付の訴えの利益なしといっただけで終わっているのですが,千葉裁判官が詳細な補足意見を述べており,昭和63年判決の射程について,狭く解するべきとしています。

千葉裁判官は,持分割合を超える賃料部分の不当利得返還請求の場合に一般的に将来給付の利益を欠くと解することは広すぎるとして,昭和63年判決の事例が賃貸借とはいっても駐車場であったということを重視するべきとしています。

駐車場であるとすると,将来にわたって継続する蓋然性は低いので,大阪空港事件に照らしても訴えの利益を認めるべきではないことになるのであり,これが借家の賃料や建物所有目的の借地の場合には,将来の給付請求を認めるべきであるとしています。

こうなると,昭和63年判例から一律に遮断されると考えがちであったものについても,元となっている賃料が何についてのものかによっては結論が変わってくることになります。

このような細分化して整理することにどのような意義があるのかという点ですが,相続によって賃貸借の目的物が共有になってしまっている物件などで案外該当する事態があるかもしれません。

 

最高裁,面会交流を命じる審判が出されたものの,その通りに実施されなかった場合,当該審判においてに面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ, 子の引渡しの方法等が具

離婚の際,離婚後に監護しない側の親と子供の面会交流について定めを置くことが多いですが,その通りに実施されなかったり,だんだんと行われなくなっていく傾向があります。

これは面会交流をする親の側の事情であることもありますが,通常,監護している側の思惑によることもあります。

どの程度,面会交流が実現されているのかは,以前,調査したことがあるのですが,それは別に譲るとして,面会交流が約束した通りに実施されない場合に,これを強制する手段があるのかということが議論されてきていました。

このたび,実現しないならいくらいくら払えという形での間接強制が許されるのかという論点の形で判例がでまして,面会交流に間接強制できる場合があることが正面から判示されました。

ポイントとなるのは,民事執行法の考え方にのっとって,給付の特定がされているのかという点でして,それがされているなら,義務者は何をしないといけないのかわかるわけですから,間接強制ができるということになりました。

審判で面会交流について命じておりこれが確定した場合については,最高裁は以下のように判示しています。

最高裁判所第一小法廷平成25年03月28日決定 平成24(許)41 間接強制決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件

監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。

要するに,審判の場合には,日時又は頻度,時間の長さ,この引渡しの方法等が定められていれば,間接強制可能ということになります。

この件においては,引き渡しの方法が定まっていなかったとして,間接強制決定はできないという結論になっています。

これに対して,以下の事件では,それらすべての特定に欠けるところはないとして間接強制が可能としています。

最高裁判所第一小法廷 平成25年03月28日決定 平成24(許)48 間接強制に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

この事件では,子の引渡し方法として,下記のような内容が定められており,ここまでいくと特定に欠けることがないとされています。

①面会交流の日程等について,月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし,場所は,長女の福祉を考慮して相手方自宅以外の相手方が定めた場所とすること,

② 面会交流の方法として,長女の受渡場所は,抗告人自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,JR甲駅東口改札付近とすること,抗告人は,面会交流開始時に,受渡場所において長女を相手方に引き渡し,相手方は,面会交流終了時に,受渡場所において長女を抗告人に引き渡すこと,抗告人は,長女を引き渡す場面のほかは,相手方と長女の面会交流には立ち会わないこと

 

また,同日付で面会交流を定めたのが調停であった場合についても判示があり,法律論部分が以下のように上記とは微妙に異なっています。

最高裁判所第一小法廷 平成25年03月28日決定 平成24(許)47 間接強制申立ての却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

非監護親と監護親との間で非監護親と子が面会交流をすることを定める調停が成立した場合において,調停調書に面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえるときは,間接強制を許さない旨の合意が存在するなどの特段の事情がない限り,上記調停調書に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。

上記特段の事情がついたのは,調停の場合,あくまで合意であることから,別段の合意もまた可能であるということでしょう。しかし,調停が成立するということは原則,間接強制も含めて可能ということになり,あくまで例外という位置づけになっているものと思われます。

また,この件では,当の子供が会いたがっていないので間接強制はできないとする反論がされていましたが,それは間接強制の可否を左右するものではなく,それについては新しい調停や審判を申し立てて,取り扱うべきことであるということが示されました。

民事執行の考え方から行くと,確かに特定されているかという点に尽きるのだろうとは思いますが,子の引渡し方法の特定という点が,頻度や時間についての定め以上に,独立しての意義がどれほどあるのかはやや良くわからない気もします。

以上から,間接強制可能な面会交流の定め方が,明らかになったことになります。離婚が家庭裁判所に持ち込まれた場合,面会交流を定めることが非常に多いですので,実務には,大きな影響を与えると思われます。

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