Japan Law Express

企業法務関連情報を中心とした法律ブログ

金融商品取引法事情

証券取引等監視委員会、三栄建築設計の社長保有株を有価証券報告書等に虚偽記載していたとして課徴金納付命令勧告

東証一部上場の三栄建築設計が、東証二部上場だった時代に代表取締役社長の保有株式数について過小に記載した有価証券報告書又は有価証券届出書を提出していたとして、証券取引等監視委員会が課徴金納付命令勧告を出しました。

株式会社三栄建築設計に係る有価証券報告書等の虚偽記載及び同社株式に係る変更報告書の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について:証券取引等監視委員会

上記のリリースには出てきませんが報道によると、一部を知人名義とすることで虚偽の記載をして東証二部の上場基準を満たしているかのように記載したということですので、かなりの重大性があるといえるでしょう。

不実開示責任は様々なものが用意されていますが、課徴金も可能となっており、それにもとづいて課徴金納付命令を出すように証券取引等監視委員会が勧告をしたということになります。私人からの損害賠償請求も可能ですので、これ以外にも広がる可能性があります。

ちなみに課徴金額は、約8000万円なのですが、継続開示の不実開示の課徴金の金額はかつて議論になったことがあり、最低300万とか600万とかで立法が行われていたことを考えますと、きちんとした数式に基づいての算出ではあり裁量が働いているわけではないのですが、この金額はかなり大きめであると感じられるところです。

同社ではこれを受けて、代表取締役に対する処分が行われるとのことで公表されています。

証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告について

課徴金納付命令の勧告を踏まえた当社の社内処分について

 

金融庁,オリンパスの有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令について,課徴金額が,同一事件の刑事事件で確定した罰金額の方が高額であったことから,課徴金納付命令を一

有価証券報告書等の虚偽記載の場合に命じられる課徴金納付命令は,刑事事件で罰金刑が命じられた場合に調整される仕組みになっています。

(決定の効力の停止)

第百八十五条の八

(略)

内閣総理大臣は、前条第一項の決定又は同条第六項、第七項若しくは第十項から第十三項までの決定の後、同一事件について、当該決定を受けた者に対し、罰金の確定裁判があつたときは、当該決定に係る課徴金の額を、これらの規定による額から、第一号に掲げる額から第二号に掲げる額を控除した額を内閣府令で定めるところにより当該決定に係る課徴金の額に応じて按分して得た額に相当する額に変更しなければならない。ただし、第一号に掲げる額が第二号に掲げる額を超えないときは、この限りでない。

当該決定に係る課徴金の額を合計した額

当該罰金の額

(略)

第六項ただし書又は前項ただし書の場合においては、内閣総理大臣は、前条第一項、第六項、第七項又は第十項から第十三項までの決定を取り消さなければならない。

オリンパスの有価証券報告書等の虚偽記載について,課徴金納付命令が先に出ていましたが,刑事事件にもなったため,効力が停止されており,刑事事件が罰金7億円で確定したところ,課徴金納付命令の金額を超えることから,同一事件の範囲内につき,課徴金納付命令が取り消されたことが発表されました。

オリンパス株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令一部取消しの決定について:金融庁

金融商品取引法違反が疑われる業者の間で,緊急差止命令の申立てを回避させる動きが出てきていると報道される

金融商品取引法所定の緊急差止命令の実例が出たということはこのブログでも大きく取り上げてきており,証券取引等監視委員会の新しい活動として注目してきておりました。

しかし,ここのところ,新しい発令は伸び悩んでいるところ,疑わしい業者が減ったわけではなく,業者の動きが巧妙を極めてきていることが本日付の日経の報道で言及されました。

それは,緊急差止命令が「緊急性」を要件としているところを逆手に取り,証券取引等監視委員会が動いたときには手口を変えているということとされていました。

同じ行為が続いており,緊急に差し止める必要があるということを断ち切ってしまうということのようです。

これは,司法手続きの際に必ずついて回る特定の問題の一種でもあるように思われますが,結局,警告して終わりという事態が相次いでいる模様です。

金融庁はそのような警告をした業者の実名を出すことをしており,毎月のように追加がされていることから,それを伺うことができます。

無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について : 金融庁

紙面では,緊急差止命令の条文のつくりに問題の原因を求めているような感じがあったのですが,司法手続きを活用する場合にはこのような問題がついて回るのはいつものことなので,緊急差止命令を変えれば何とかなるのかというとちょっと違うような気もしました。

企業が決算を公表する前で掲載準備の段階の決算情報等を複数の投資家が企業のウェブサイトにアクセスして閲覧していたことが判明 一部ではそれに基づいて株取引がされていたとみられ

企業が決算情報を公表する前にネットに掲載準備中の情報を企業のホームページにアクセスしてアドレスを推測することで閲覧して,それにもとづて株取引がされていたようであることが判明しました。

企業の決算情報など、一部投資家が公表前に閲覧し株取引 監視委調査で判明| マネーニュース| 最新経済ニュース | Reuters

[東京 14日 ロイター] 上場企業が公表する前の決算情報などの重要情報について、ホームページ(HP)を管理するサーバーへのアクセスを通じて一部の投資家が閲覧し、株式売買で利益を得ていたことがことがわかった。関係筋が14日、明らかにした。

証券取引等監視委員会の調査で判明した。企業関係者からの情報伝達ではないため、監視委は金融商品取引法違反(インサイダー取引)での立件は見送ると見られる。

複数の上場企業で、決算などの発表を円滑に進めるために公表前から情報ファイルをサーバー上に保存していた。通常の閲覧方法ではファイルへのリンク公開まで閲覧できないが、セキュリティーが十分でない複数の企業で、公表前でもアドレス解析などを通じて閲覧できる状態だった。

(略)

サーバーにアップしても,直でアドレスを入れてもみることができないようにすることは可能ではあるのですが,そのような対策をしていない企業もあり,アドレスを予測して閲覧できてしまったようです。

本件はそもそも,決算公表前に特定の企業の売買が集中していたことから証券取引等監視委員会が不審に思って調査の結果,発覚したものであるようです。

しかし,この件は事前に情報を入手して売買をしているため,市場の公正をゆがめる行為であることは確かなのですが,金融商品取引法で何か禁止行為に該当するかというと難しいところがあります。

情報を先に得て市場の公正をゆがめるのはインサイダーではないかと思えるところですが,今回は勝手にみてしまっており,情報を企業内部から得ているということではないために該当しないのです。

インサイダー取引とは,会社の内部者か準内部者,情報受領者(内部者・準内部者から情報の伝達を受けたもののこと),第一次情報受領者(前三者から直接情報の伝達を受けたもののこと)が,未公表の重要事実に基づく取引をすることが禁止されるというものです。

今回は情報の伝達受領を欠くために,インサイダー取引そのものではないのです。

そのため,証券取引等監視委員会も金商法違反としては取り上げず,事と次第によっては不正アクセス禁止法違反として取り上げることを示唆している模様です。

しかし,金商法上に何の引っ掛かりもないかというとそうでもないかもしれません。

157条の不正行為禁止は,不正の手段を使ってはダメとしているだけの広すぎる規定なので,使えないこともないかもしれません。

しかし,それほど大したことをしているわけではなく,企業側の脇が甘いきらいがあるということなので不正の手段というほどでもないということになってしまいそうです。

アコーディア,PGMのTOBに対して意見表明を留保

JAPAN LAW EXPRESS: PGMホールディングス,アコーディア・ゴルフに対して公開買付の続報です。

アコーディアは,TOBについての意見表明を留保すると発表しました。

PGM ホールディングス株式会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(留保)のお知らせ

事前協議もなく一方的であったために,検討が十分できていないということが理由とされています。

しかし,すでに2週間経過しており,それでもまだ十分でないというのは,情報収集だけが問題になっているわけではないということかもしれません。

記事検索
最新記事
とある東京の弁護士兼社会保険労務士が法律情報をお送りします。
QRコード
QRコード
アーカイブ
  • ライブドアブログ