Japan Law Express

企業法務関連情報を中心とした法律ブログ

租税法務事情

中小企業経営承継円滑化法の改正をめぐり報道がされる

家業で行っているような企業を念頭にして事業承継のための特別な法律である中小企業経営承継円滑化法という法律があり、かなり大胆な内容である割に活用されていないのですが、その使い勝手をさらに向上させる法改正の報道がなされました。

中小の事業継承、円滑に 非親族にも譲りやすく法改正へ :日本経済新聞 2014/8/15 2:00 日本経済新聞 電子版

政府は、中小・零細企業が後継者を見つけやすくなるよう後押しする。親族ではない従業員が事業を引き継ぐ例が増えているため、親族以外に対しても会社の株式を時価より安く譲れるよう法改正する。株式を譲る際にかかる贈与税の優遇対象も広げる。後継者難で廃業する中小企業を減らし、地域の雇用や技術力が失われるのを防ぐ。

(略)

この法律は要するに家業を事業承継する場合に、時価よりも低く譲渡できるようにするというものなのですが、法改正で

  • 株式の承継を時価より低くする対象の拡大
  • 時価よりも低く譲渡した場合の贈与税の優遇

を行うことが検討されている模様です。

この法律はその意欲的な内容のわりに利用が芳しくないところがあるようなのですが、その理由の一端があまりに対象が限定されすぎている点にあるということで、拡大を図るという対応が考えられている模様です。

事業承継に悩んでいる中小企業の問題はかなり広がってきているのですが、この法律で対処できるのは障害のごくごく一部にすぎません。ハードルすべてについて事業承継を容易にするように政策をパッケージ化しないとなかなか難しい面がありますが、法人税の問題、国際競争の問題など、隣接の政策分野がどこまでついてきているかは若干心もとない感じがします。

 

最高裁で,日本と香港を行き来していた武富士創業者の長男に対する課税処分をめぐる訴訟で弁論が開かれる

JAPAN LAW EXPRESS: 最高裁、東京と香港を行き来している武富士創業者長男への課税が争われている訴訟で、国側勝訴の控訴審判決への上告に対して、弁論期日を指定の続報です。

1月21日に上記記事でお伝えした弁論が開かれまして,報道でもその内容が簡単に取り上げられています。

武富士創業者の長男である武井氏は,武富士の元専務です。最高裁での弁論の内容は以下のように伝えられています。

武富士元専務の課税処分訴訟、2審見直し可能性 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2011年1月21日21時59分  読売新聞)

(略)

元専務側は、当時の相続税法で、海外居住者に海外財産が贈与された場合は課税対象外とされていたことを踏まえ、「贈与当時の住所は香港にあり、納税義務はない」と主張。これに対し、国側は「香港での滞在は課税を免れるためで、生活の本拠は国内だった」として、課税処分は正当と主張した。判決は2月18日。

(略)

上記は当然,弁論のごくごく一部を伝えているでしょうが,これに依拠すると,これまでに明らかになっている事実のもとで住所が日本にあるか否かを判断するという当てはめについての問題になりそうです。

 

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政府の勉強会、子会社からの配当を非課税とする法人税制を検討

財務省の研究会に「資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会」というのがありますが、これは財務省だけではなく経済産業省や金融庁なども参加している省庁横断的なものです。

会の名前のとおり法人税法でいうところの資本等取引に関することを検討しており、グループ企業の税制について報告をまとめたことが明らかになりました。

子会社からの配当、非課税に 政府、法人税制で検討(日本経済新聞2009年8月16日)

政府は企業グループに対する法人税制について見直しに入った。親会社がグループ内の100%子会社から受け取った配当を課税所得に算入しない仕組みを導入。グループ経営が広がるなか、グループ内の資金移動の妨げになる税制を見直し、グループの余剰資金を設備投資などに振り向けやすくすることで企業活動の活性化を促す。同時に、大企業の100%子会社について中小企業向けの軽減税率の対象から外す措置も検討する。

経済産業省、財務省、金融庁、中小企業庁に民間有識者を加えた「資本に関係する取引等にかかる税制についての勉強会」が報告書を策定。経産省などは報告書の内容を税制改正要望に反映させたい意向だ。仮に民主党政権になった場合は、税制改正の決定権を握る現在の与党税制調査会を廃止し、財務相の下に新しい税制調査会を置く方針で、新税調が改正の必要性を判断する。(07:00)

報告書ではないですが、以下の論点取りまとめに上記報道の内容が触れられています。

資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会 論点とりまとめ

上記報道では子会社からの配当だけが触れられていますが、本紙面の記事ではグループ内の資産の移転についても言及がありました。

これだけをきくと租税回避行為が危惧されますが、上記論点取りまとめでは内容は言及していないものの租税回避行為についても対処が必要とする旨が述べられています。

ちなみにこの勉強会には、増井教授と京大の岡村教授が入られています。いつも論文で空中戦をされている間柄なので、想像すると何だかすごいものがあります。

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大分地裁、商品先物取引で業者から受け取った損害金に雑所得として課税した課税処分を一部取消し

所得税において、損害賠償による損害金などは非課税所得となります。

所得税法

第9条(非課税所得)

次に掲げる所得については、所得税を課さない。

十六 損害保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの

これは、失ったものを填補しているだけであり、新しく得ているわけではないからです。

しかし、損害賠償であるかどうかは本当に損害があるかによって決まるのであって、当事者が決めた支払名目が「損害賠償金として」となっていればなんでも非課税となるわけではありません。

よって、訴訟の結果損害賠償として認められたならともかく、当事者間で合意した賠償金の支払については、課税されてしまい本当に損害があるかが改めて問題となるわけです。

この論点についてはマンション建設反対運動の承諾金事件が有名ですが、似た事案として、商品先物取引で業者に問題のある勧誘行為があったのか顧客との間で損が出たことについて紛争となり損害金を支払うことで合意したものの、それに課税がされてしまったという事件がおきました。

先物取引損害、和解金は非課税 大分地裁、国の処分取り消し(日本経済新聞2009年7月6日)

商品先物取引による損害をめぐり、業者から損害賠償金などとして和解金を受け取った大分県の男性が所得税を課されたのを不服として、国に課税処分取り消しを求めた訴訟の判決で、大分地裁(一志泰滋裁判長)は6日、原告側主張をほぼ認め、約460万円の課税処分を取り消した。

一志裁判長は判決理由で「和解金は先物取引による損害に基づいて取得したもので、非課税所得に該当する」とした。

(略)

判決によると、男性は先物取引業者の不法行為で約6000万円の損失を被ったとして提訴。その後、2001年に業者側が1900万円を支払うことで和解が成立した。別府税務署は05年、和解金のうち訴訟費用などを除く約1400万が雑所得に当たるとして所得税約530万円を課税した。〔共同〕(00:45)

別府税務署は和解金の大半について課税してしまったのですが、大分地裁はこれを否定してほとんどの課税を取消しました。

課税分が一部残っていますので、損害をめぐる事実認定の違いということになるかと思われます。

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