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山喜、ノンコミットメント型のライツ・イシューで資金調達 東証の規制後初の事案であり同社は株主総会の承認を条件とすることも公表

東証、平成26年10月から、ノンコミットメント型のライツ・イシューを規制へ | Japan Law Expressの関連情報です。

上記従前の記事のとおり、東証は会社法の規定にかかわらず、新株予約権の発行のうち、ノンコミットメント型のライツ・イシューと呼ばれる株主割り当てであるものの未行使分の新株予約権について、行使を約束する引受人がいない類型について、規制を設けています。

この規制が設けられて以降、初のノンコミットメント型のライツ・イシューで資金調達をする事例が出ましたので取り上げます。行うのはシャツの大手の山喜になります。

山喜のプレスリリース

会社作成のQ&A

上記リリースから明らかなとおり、本来取締役会の権限であるものの、株主総会の承認を得ることを条件とするとされており、その理由として株主に影響があることを挙げており、さらに東証の上場規則で規制があることにも言及があります。したがって、ソフトローによる規制が実務態様にそのまま影響を与えたということになります。

また、本件では、株主の承認について、普通決議とされています。

この点、東証の上場規則では、株主の意思の確認という言い方をしているため(有価証券上場規程304条(2)b)、具体的な決議要件は実行しようとする会社それぞれの判断となるところです。

もっとも、経営権を巡って争いがあるなどの特段の事情がない限り、普通決議で意思確認をするというので十分と思われます。

金融庁と東証がまとめる「コーポレートガバナンス・コード」で、上場規則に複数の社外取締役の設置を求めることが明らかに

会社法制定前後からのことですが、会社を規律する法制度について、機動的に動けない立法から離れてソフトローによる規律が進んできていますが、このソフトローは上場規則または金融商品取引法上の義務である継続開示の内容の追加などの形で具現化されています。

このたび、金融庁と東証が「コーポレートガバナンス・コード」をまとめ、その中で上場規則に社外取締役を複数置くことを求める内容が盛り込まれることが明らかになりました。

金融庁、社外取締役の複数化促す 上場企業行動指針-北海道新聞[経済] (11/22 11:54)

金融庁と東京証券取引所は22日、上場企業の行動指針となる企業統治原則(コーポレートガバナンス・コード)に、複数の社外取締役を置くよう促す規定を盛り込む方向で調整に入った。25日に開く有識者会議で原案を示す見通し。年内に結論を出し、来年6月の株主総会の時期までに東証上場規則に反映する。

企業統治原則の策定は、企業の収益力を高める目的で、安倍政権がまとめた成長戦略に盛り込まれた。法律による義務化ではないが、企業は統治原則の内容を実施するか、しない理由を説明することが求められる。

上記のように結果として上場規則では、直接複数の社外取締役を置くことを求めるものではなく、複数の社外取締役を置く意思があるかについて公表する事を求めるという内容になる模様です。

このように意思の確認や理由の説明といった義務付けは、最近のソフトローの設計方法として定番化しており、その例に倣った感じといえるでしょう。

もっとも、社外取締役の設置はだんだんと進んできていますが、その人材は官界の出身者や法曹関係者が多く、ガバナンスという点では大いに寄与できるでしょうが、企業の成長という点ではどうなのかという疑問が出始めています。しかし、経営にアドバイスするのだとすると、それは業務執行ですので、それは社外取締役の役割は異なるのかもしれません。

NSD、株式の無償割当てを実施へ 自己株式を活用しての無償割当ては初

東証一部上場のシステム開発のNSDが、株式の無償割当てを実施することが明らかになりました。

株式の無償割当てとは、会社法で誕生した制度で、株主に払い込みなしで株式を割り当てるものです。

NSDのプレスリリース

この無償割当ての特徴は、複数ありますが、そのうち、異なる種類の株式を割り当ててもよいこと、割り当てるのは新株を発行しても自己株式でもどちらもよいという点があります。

第185条(株式無償割当て)
株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の株式の割当て(以下この款において「株式無償割当て」という。)をすることができる。

第186条(株式無償割当てに関する事項の決定)
株式会社は、株式無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に割り当てる株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
二 当該株式無償割当てがその効力を生ずる日
三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該株式無償割当てを受ける株主の有する株式の種類
2 前項第一号に掲げる事項についての定めは、当該株式会社以外の株主(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の種類株主)の有する株式(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の株式)の数に応じて同項第一号の株式を割り当てることを内容とするものでなければならない。
3 第一項各号に掲げる事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

新株発行をして種類株式を無償割当てした例が伊藤園でありますが、このNSDの事例で特徴的なのは、自己株式を用いて割り当てるという点であり、日経の報道によると初であるとされています。

なお、上記リリース中に記述がありますが、本件についても基準日が設定されています。株式分割では、基準日の設定が法律上必要ですが、無償割当てでは必要ではありません。しかし、実務上の必要性から基準日の設定はした方がよいことは当然予想されるわけで、本件もその例に漏れない模様です。

東証、平成26年10月から、ノンコミットメント型のライツ・イシューを規制へ

東証は3日、いわゆるライツ・イシューについて、規制に乗り出すことを発表しました。

新株予約権証券の上場制度の見直しについて

規制内容は、ノンコミットメント型のライツ・イシューについて、証券会社の事前審査か、株主総会の意思確認を義務付けるという内容であり、そもそも、債務超過や2期連続で経常赤字の企業には認めないという内容にもなっています。

ノンコミットメント型とは、未行使分の新株予約権について、行使を約束する引受人がいない類型のことです。

株主割り当てであることから容易に発行できるように見え、本来増資できない企業もできてしまうため、合理性のない増資が行われ、実際には既存株主が不利益を被っていると指摘されていることに対応するものとなっています。

第一生命、議決権の行使結果を開示へ

機関投資家であるもののあまり存在感のなかった大手生命保険会社が、議決権行使基準を策定したり、議決権の行使結果である賛否を公表するところが出てきていることが明らかになりました。

「物言う生保」存在感 第一生命、議案賛否数を公表 :日本経済新聞

2014/8/14 0:55 (2014/8/14 3:30更新)

「物言わぬ株主」と言われてきた生命保険会社が、株主総会での議決権行使によって投資先への経営関与を強める。第一生命保険は大手生保で初めて、投資先の上場企業の議案にどう賛否を投じたかを公表することを決めた。18兆円もの株式を保有する生保が投資先の剰余金処分などの監視を強めれば、企業に増配などを促すきっかけとなりそうだ。

■情報開示を強化

「ほかの生保から余計なことをしたと批判されるかもしれないが、上場企業として情報開示を強化する必要があった」。第一生命は月末に今年の株主総会で投資先企業の議案ごとにどう賛否を投じたか初めて公表する。同社幹部はその狙いをそう説明する。

生保が「物言う株主」に転じ始めた契機は、機関投資家の行動規範を定めた「日本版スチュワードシップ・コード」の導入だ。2月に金融庁が指針をまとめ、大手生保が一斉に導入を表明した。

これまでも生保は取締役選任などの議案に賛成するか否認するかの内部基準があったが、議案の賛否数などはほとんど公表していなかった。生保の株式保有は資産運用の面だけでなく、保険商品を投資先に売るための「営業ツール」としての側面もあったためだ。

生保は国内上場企業の発行済み株式の4%にあたる株式を保有し、取締役の選任などで議決権を行使すれば企業への影響は大きい。例えば第一生命は今年から、在任12年を超す監査役の再任には反対票を投じることにした。取締役会のなれ合いを防ぐためだ。

ほかにも経営状態の悪い企業が買収防衛策を導入しようとすれば、これにも反対票を投じる。今年の株主総会では投資先の約2000社の議案のうち10%弱に反対したという。月末にはさらに「取締役の選任」「剰余金の処分案」など議案ごとの賛否数を公表し、企業に経営改善を働きかける。生保は国債の利回り低迷で運用実績が伸び悩む。保有株の投資価値を高める必要があるためだ。

(略)

上記のとおり、日本版スチュワードシップ・コードによって機関投資家としての振る舞いが強化されたことが明らかになっています。

これだけではなく、企業価値の向上を図ることで運用面での成果も期待する向きもあるのでしょう。

もっとも、もともと代表的な日本企業にいた身としては、上記記事中の営業面も非常に大きいことを感じますので、果たしてこのままでいけるのかは若干微妙にも思えるのですが、別の問題として保険の販売チャネルの多様化などもあり、問題は限定的になっているということがあるのかもしれません。

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