ミス東洋英和で日本テレビにアナウンサーとして内定していた大学4年生の女性が、クラブでのアルバイト経験を申告していなかったことを理由に内定を取り消されたところ同社を相手取って訴訟提起していた事件で、8日、和解が成立したことが明らかになりました。

日テレ女性アナ内定取り消し訴訟和解 4月入社へ :日本経済新聞 2015/1/8 20:42

日本テレビのアナウンサー採用が内定した後、東京・銀座のクラブでのアルバイト経験を理由に内定を取り消されたとして大学4年の笹崎里菜さん(22)が地位確認を求めた訴訟は8日、東京地裁で和解が成立した。日テレが笹崎さんを「アナウンス部に配属予定の内定者」に戻すとの内容で、4月に入社する。

(略)

日本テレビが内定取り消しの理由としてアナウンサーとしての清廉性などとしたため、クラブでホステスとしてのアルバイトに対する見方などが話題となってしまいましたが、そこから離れて内定をめぐる教科書的な法的整理をまとめておこうと思います。

内定とは、やや意外に思われるかもしれませんが、判例によるとすでに労働契約が成立しているとされています。

正確には、将来の日付である入社日を開始日とする始期がついており、内定事由に書かれている事由が生じたら解約できる解約留保権もついている労働契約が成立しているとしています。

そのため、内定取消の問題は、内定事由に書かれている取消事由に該当するかという問題になるので、日本テレビがどのような内定取消事由を示していたのかが第一義的には問題となります。

しかし、実際には内定取消事由は広めに書いているものですし、バスケット条項も入っているのが普通です。したがって清廉性がバスケット条項などに照らして該当するのかという問題になりますが、判例は内定取消事由そのままではなく社会通念上許容されるものに限定しますので、その意味では、清廉性とホステスとしてのアルバイト経験、そしてそれを申告していなかったことの当否が問題となったのは結論としては裁判所の判断とそれほど異なるものではなかったと思われます。

もっとも、内定取消を争った場合で無効と判断された場合の効果も損害賠償とすることで一般的な理解がありますし、上記のような理解では内定の地位は比較的強いものといえそうですが、世の実態としては内定取消の事態はかなり労働者にとって厳しいものであることが多いと思われます。

そういう意味では、かなり異例な結論になった一件ということができましょう。

ちなみに興味深いのは和解に含まれている文言である「アナウンサー部の配属予定」ということですが、文言の用い方からも、これは職種限定契約であることを示すものではなく、最初の配属部署を明示しているに過ぎないと思われます。

本件からは離れますが、求人において担当してもらう職務を示すことはよくありますが、裁判例的にはそれでもって職種限定契約であると解釈することには極めて制限的です。本件も当然そのような労働契約であるものと思われます。