東日本大震災後の対応として、民間の賃貸住宅を地方自治体が借り上げて、そこに被災者に入居させ、それを仮設住宅と同様の取扱をして、賃料などが公費負担になっているものをみなし仮設住宅(応急仮設住宅)というそうです。

このみなし仮設住宅で、もともとの賃貸借契約が終了したのに入居者が退去しないとして、宮城県が入居者に、建物からの退去明渡しと賃料相当損害金の支払いを求めて提訴したことが明らかになりました。

宮城県が「みなし仮設住宅」退去求め提訴 被災3県で初、男性2人に - MSN産経ニュース 2014.9.8 12:07

東日本大震災で民間賃貸住宅を行政が借り上げる「みなし仮設住宅」の定期賃貸借契約の期間が終了したのに、退去しないのは契約違反だとして、宮城県が入居者の男性2人に明け渡しなどを求める訴えを、仙台地裁と同地裁石巻支部に起こしたことが8日、分かった。

宮城県によると、岩手、福島を含む被災3県で、自治体がみなし仮設の入居者に退去を求めて提訴したのは初めて。

(略)

入居を続けるには貸主と入居者双方の同意が必要だが、貸主が再契約をしないと通告。県が別の仮設住宅への転居を案内しようとしても2人は応じず、建物の明け渡しと契約終了後の家賃の支払いを求めている。

応急仮設住宅(民間賃貸住宅)の基本的な仕組み - 宮城県公式ウェブサイト

そもそも震災対応の特殊な制度であり一般的な賃貸借の法理に乗せるのに相応しくないかもしれませんし、仮に乗せたとしても、報道によるともとの行政による借り上げが、定期借家であったと見受けられますので、その時点で特殊事情があるといえそうです。

賃貸借の議論においては、賃貸借の目的物が転貸されている場合、賃貸人と賃借人が合意解約しても、転借人には対抗できないという大審院判例があります。ここからいくと、元の賃貸借契約が入居者のあずかり知らぬところで終了してしまっても対抗できることになりそうです。

しかし、大審院判例は合意解約を対抗できないとしたものであるため、本件は定期借家であることがこれらの判例と比べても異なります。また判例は、サブリースに関して、終了をテナントに対抗できないとしたことがありますが、これは賃貸人がサブリースという仕組み上、最初から承諾しているはずというところに根拠が求められています。本件は、あくまで震災対応の応急措置的なものである点、定期借家という形式をとっている点から行くと、承諾をしていたというところまでは求められないことから、やはり、一般的な賃貸借の議論に照らしても入居者には難しいのではないかと考えられます。