このブログで継続的に取り上げてきた武富士創業者長男に対する課税処分が争われた事件ですが,最高裁で弁論が開かれたことから予想された通り,最高裁は課税処分を適法とした原審を破棄して,課税処分を取り消した第一審判決を支持,武井俊樹氏の勝訴に終わりました。

最高裁判所第二小法廷平成23年02月18日判決 平成20(行ヒ)139 贈与税決定処分取消等請求事件

租税法は専門ではないのに加えて,本件は,事実関係を前提としてあてはめが争点になっており,判決文をご覧いただくしかありません。

最高裁は,端的に言うと,武井氏の香港での生活実態に関する原審までの事実認定に基づいて,

上告人は,本件贈与を受けた時において,法1条の2第1号所定の贈与税の課税要件である国内(同法の施行地)における住所を有していたということはできないというべきである。

としました。

実のところ,香港に行ったとしても,武富士の役員を辞めたわけではなく,取締役会のために日本に戻ったりしているので,租税回避ではないかという見方もありうるところですが,相当程度の生活実態が香港でもあることから,上記のような判断になったものといえましょう。

還付される金額は約2000億円と相当になります。

これを武富士が会社更生になってしまい過払い金の請求が問題となることから,役員としての責任を追及してこの還付金をあてにしようという動きが既にありますが,それを実現するのはかなり難しそうです。

最高裁は,居住の実態だけを見て判断をしているにすぎないと思いますが,実際のところこのブログでも若干言及した通り,武井氏には租税回避ではなく香港に行ってしまう事情があったかもしれません。すると経営についての関与も役員を辞めている時期が比較的以前であることからも,困難な障害があるといえそうです。

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